「藪蛇リスク」にも対応を
そこで効果を発揮するのが「評価棚上げ宣言」です。
たとえば、ミーティングの雰囲気が怪しくなってきたら、私は以下のように伝えるようにしています。
「空気が硬いな。皆の意見が聞きたい。どんなに証拠が不十分な発見でも、感想でも構わない。自信がない意見でも良い。いま議論しているテーマについて、あなたたちの意見を聞かせてほしい。ちなみに、この会議での発言は、評価には一切反映させないことを約束します」
いわばこのワイガヤの場だけは、評価の「禁猟区」であるということを宣言するわけです。このテクニックは、コンサルティング業界のように競争の激しい職場では特に効果を発揮します。
もちろん、いったん宣言したら、約束は守る。それは絶対の条件です。
また、「不用意な発言で自分の仕事が増えてしまう」という、いわば「藪蛇(やぶへび)リスク」も、発言を阻害する要因になりえます。これは主に、ルーティンワークの多い間接部門などで起こりがちです。
ここでも最初に「仕事割り振り棚上げ宣言」をしてしまいましょう。
「どうしたら、いまの仕事の品質を上げられるかについて発言してほしい。その提案で自分の仕事が増えてしまうと思う人もいるかも知れません。でも、信用してほしい。仕事の割り振りは、別の段取りでフェアに考えるから。まずは、仕事の割り振りを忘れて意見がほしいんです」
これも、もちろん言ったからには必ず守らなくてはなりません。
マネジャーの多くは「チームメンバーがなかなか口を開いてくれない」と嘆きますが、その原因の多くは自分にあることに気づくべきです。こうした工夫によって、誰もがなんでも本音で言えるチームをぜひ、作ってほしいと思います。
本間日義『ホンダ流ワイガヤのすすめ――大ヒットはいつも偶然のひとことから生まれる』、朝日新聞出版
「多様性を生かす組織論(3)職場のレイアウトに工夫」(鈴木竜太、「経営学はいま」日本経済新聞、2014/1/17)
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山本真司 著