繊維製品からの住宅火災ゼロを目指し「防炎」の衣料や寝具を開発・販売

――御社が手がけている「防炎製品」とは何でしょうか?

田中 燃えにくい繊維素材で作った衣服や寝具、家具などのことです。

 弊社で開発した防炎製品は、キッチンでコンロの火が燃え移ったり、寝タバコで焦がしたりしても、それ以上燃え広がらずに自ら延焼を防ぐ「自己消火性」を持っています。状況にもよりますが、弊社の実験では着火後1〜2分で鎮火することが可能です。性能の高さが認められ、(公益財団法人)日本防炎協会の品質基準に合格しています。

繊維製品からの住宅火災ゼロを目指し「防炎」の衣料や寝具を開発・販売代表取締役・田中義人氏。1946年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、伊藤忠商事に勤務。その後、家業に従事し、81年業務用繊維製品販売業を創業。2011年に難燃性繊維製品の製造販売に特化したT・Sトレーディングを設立し、現在に至る。

――「moenca」と「moenain」という燃えにくい布製品の二つのブランドを展開されていますね。

田中 「moenca」は、枕、布団、シーツ、マットレス、座布団、布製家具、キッチン用品など寝装家具雑貨のブランド、「moenain」は、エプロン、Tシャツやポロシャツ、カーディガン、ニット帽など衣服用のブランドです。

 商品ラインナップを幅広くそろえている理由は、住宅火災を防ぎたいからです。

 火事の原因は家の中に複数あるので、寝具だけ、あるいは洋服だけ防炎にするだけでは火事は防げません。そこで、家の中にあって火元になる可能性の高いものを網羅しました。

――そもそもなぜ、防炎製品を作るに至ったのですか?

田中 会社独立直後の1982年に起きたホテルニュージャパンの大火災を見たのがきっかけです。

 独立するまで私は、一貫して繊維関係の仕事をしてきました。大手商社の寝具課に3年間勤めた後、繊維の小売業を営んでいた家業を10年ほど手伝い、そこで積んだ経験を生かして、81年に繊維の卸売業として独立しました。

 法人向けにどんなビジネスをするか模索していたときに、大火災を見て、「これからは燃えにくい素材が必要になる」と直感したのです。