マネーゲームは未来永劫続かない

 リーマンショック以降の世界経済は、低物価と景気の緩やかな回復を享受した。グローバル化でインフレ圧力が低下したことも重要だった。企業は中国など低コストの場所で生産を行い、最終製品を米国のように高い価格で販売できる市場に供給する体制を強化した。米GAFA(Google、Apple、Facebook〈現Meta〉、Amazon)や中国のBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)の成長はデジタル化の加速を支え、有力なIT先端企業への成長期待は一段と高まった。

 そうして20年3月中旬、米国ではFRBがコロナ禍への対応として金融緩和を強化した。それを足掛かりに、世界全体で過度な成長期待が高まった。その一つに、ビットコインなどの暗号資産の需要が増加することへの期待が急上昇した。

 また、「アマゾンキラー」と呼ばれる、高い成長が期待できるITスタートアップ企業への投資熱も高まった。そうした企業は、SPAC(特別買収目的会社)による買収を通して株式を上場し、多額の資金を調達した。

 多くの資金は、暗号資産分野ではシルバーゲート銀行やシグネチャー銀行へ、ITスタートアップ分野ではシリコンバレー銀行へと預金として流れ込んだ。各行は投融資を増やし、業績は拡大した。

 20年3月末から21年11月末の間、シルバーゲート・キャピタルの株価は21倍、シリコンバレー銀行の株価は4.6倍も上昇した。いずれも、米国経済の成長ペースを上回る水準だ。カネ余りと、過度な成長期待の高まりを背景とするマネーゲームが膨張した。しかし、こうした高成長が、未来永劫(えいごう)続くことは考えづらい。