ダイヤモンド決算報#百貨店Photo:PIXTA

新型コロナウイルス禍に円安、資源・原材料の高騰、半導体不足など、日本企業にいくつもの試練が今もなお襲いかかっている。その中で企業によって業績の明暗が分かれているが、格差の要因は何なのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は丸井グループ、J. フロント リテイリング、三越伊勢丹ホールディングス、エイチ・ツー・オー・リテイリングの「百貨店」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

百貨店4社がそろって増収
三越伊勢丹HDは驚異の大幅増益

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の百貨店業界4社。対象期間は2022年8~12月の直近四半期(J. フロント リテイリングは22年9~11月期、その他3社は22年10~12月期)としている。

 各社の増収率は以下の通りだった。

・丸井グループ
 増収率:2.3%(四半期の売上収益532億円)
・三越伊勢丹ホールディングス
 増収率:13.9%(四半期の売上高1443億円)
・J. フロント リテイリング(大丸松坂屋、パルコ)
 増収率:9.6%(四半期の売上収益878億円)
・エイチ・ツー・オー・リテイリング(阪急阪神百貨店)
 増収率:26.9%(四半期の売上高1705億円)

※高島屋は会計方針の変更に伴い、前年同期比増収率が非開示のため、掲載を見送った。

 新型コロナウイルス感染拡大によって大打撃を受けてきた百貨店業界の4社だが、いずれも四半期増収率がプラスとなった。

 中でも、三越伊勢丹ホールディングスとエイチ・ツー・オー・リテイリングは2桁の大増収だ。コロナ禍に伴う大減収からの反動増の影響には注意が必要だが、復活の兆しが見え始めている。

 このうち三越伊勢丹ホールディングスは、第3四半期累計の営業利益が「約8.2倍」、最終利益が「約21.2倍」と驚異的な伸びを見せた。第3四半期累計の売上高も2桁増と好調だ。

 さらに、伊勢丹新宿本店の第3四半期累計売上高は、三越と伊勢丹が経営統合して以降で最高を記録した。このペースで推移すれば、同店舗の通期売上高が、過去に一度しか達成していない3000億円に達する可能性もあるという。

 コロナショックからの「超V字回復」を果たした三越伊勢丹ホールディングスだが、その業績を細かく見ていくと、実は「油断大敵」といえる状況に置かれていることが分かる。

 次ページでは、各社の増収率の推移を紹介するとともに、三越伊勢丹ホールディングスに残された課題について詳しく解説する。