新型コロナウイルス禍に円安、資源・原材料の高騰、半導体不足など、日本企業にいくつもの試練が今もなお襲いかかっている。その中で企業によって業績の明暗が分かれているが、格差の要因は何なのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回はエムスリー、Zホールディングスなどの「ITサービス」業界5社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
メルカリが2桁増収達成も
米国事業の苦戦続く
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は、以下のITサービス業界5社。対象期間は2022年8~12月の直近の四半期(5社いずれも22年10~12月期)としている。
各社の増収率は、以下の通りだった。
・エムスリー
増収率:10.6%(四半期の売上収益625億円)
・Zホールディングス
増収率:10.9%(四半期の売上収益4537億円)
・楽天グループ
増収率:17.0%(四半期の売上収益5632億円)
・MonotaRO
増収率:17.0%(四半期の売上高600億円)
・メルカリ
増収率:17.8%(四半期の売上高443億円)
ITサービス業界の5社は、いずれも前年同期比で2桁増収となった。
これらの5社は全て、本連載で定点観測の対象とした19年10~12月期から「13四半期連続」で増収を記録するなど、好調を維持している。
中でも、増収率が最も高かったメルカリは、国内事業のGMV(流通総額)やMAU(月間アクティブユーザー数)が前年同期実績を上回り、事業規模をさらに拡大した。
一方、同社の米国事業では、GMVが4四半期連続で前年同期実績を割り込み、「0~10%の成長」を目指すという通期目標を取り下げるに至った。新たな目標値は「策定中」という。
メルカリはかねて米国事業への投資を続けているものの、収益化の面では苦戦を強いられており、上半期(22年6~12月期)のセグメント別業績では赤字を計上した。
今後も米国事業に「規律の範囲で投資を行っていく」方針だというが、“目標撤回”を余儀なくされた同事業の業績はどのような状況にあるのか。
次ページ以降では、メルカリの業績を詳しく解説するとともに、各社の増収率の推移を併せて紹介する。