世界の子どもたちも読んでいる
「生き方」についての絵本を紹介

 絵本は年齢に関係なく、送り主の思いを伝えるメッセージカードにもなります。特に、哲学的な内容の絵本は小学校低学年だけなく、中学年・高学年の心にも響きます。

 まず新学期にお薦めする本が『きみの行く道』(河出書房新社)です。欧米で大人気の児童文学作家ドクター・スースの最後の作品で1990年に発表された古い絵本ですが、いまだに園児から大学生まで人生の節目に贈る本として、特に入学や卒業シーズンには販売が急増するそうです。

 ちなみに英タイトル『Oh, the Places You’ll Go』をAmazon.comで3月14日に「売れている本」で検索したら全タイトル中75位でした。

 大げさかもしれませんが、海外のほとんどの子どもが読んでいる絵本ということで、子どもに外国人の友達ができたらこの絵本の話で盛り上がるかもしれません。

新学期の小学生に贈りたい「絵本」5選、学校で学べない“国際力”を育む
『きみの行く道』(作・絵:ドクター・スース/訳:伊藤比呂美/出版社:河出書房新社/1870円)拡大画像表示

<対象:全学年>
主人公が進む道は予測不可能、それでも行きたい方向へ向かいなさいという哲学的な内容です。低学年の子どもには理解するのが難しいところもありますが、ドクター・スースのちょっと不思議で意味ありげな絵に子どもは目を離しません。

 もう1冊のお薦めが、『はじまりの日』(岩崎書店)です。これは2016年に歌手としてノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランが自分の息子に向けて作った名曲「Forever Young」を絵本にしたもので、子どもにこういう生き方をしてほしいという願いが込められています。男の子向きと思われがちですが、最後は女の子がギターを受け取るという展開で、女の子にもボブ・ディランの歌が届きます。コロナや戦争と、子どもたちにも閉塞感が漂う中、希望を感じさせる絵本です。

新学期の小学生に贈りたい「絵本」5選、学校で学べない“国際力”を育む『はじまりの日』(作:ボブ・ディラン/絵:ポール・ロジャース/訳:アーサー・ビナード/出版社:岩崎書店/1760円)
拡大画像表示

<対象:全学年>
文章に添えられたイラストが軽やかにボブ・デュランの人生を描いています。最後に掲載された英語と日本語訳の歌詞を比べて読むと、子どもに伝えたい言葉が日本語にもぎゅっと詰まっていて、翻訳の素晴らしさも伝わってきます。