企業がリスキリングで
陥りがちな3つの失敗
その1:「スキルの獲得」自体を目的にしてしまう
社員の「スキル獲得」は、企業にとって「目的」ではなく「手段」のはずだ。スキルの獲得を目的にしてしまうと、社員のスキル獲得ができても、業務に生かすことができず、企業として結局何も変わっていない、という状況に陥る場合もある。
そうならないためにも、獲得したスキルを「どこでどう生かしていくのか?」といった「成果」を目的とするのが適切だ。その目的によって、獲得すべきスキルが定まってくるし、企業側がどのような実践的な機会を与えるべきかも見えてくる。
おすすめは、目的を達成するためのロードマップを作成することだ。ロードマップには、現状から目的へ向かうための施策やプログラムを組み立て、その中の1つのマイルストーンとして、「スキル獲得」を設定するのが良いだろう。
その2:マインドセットを軽視する
獲得したスキルを生かす土台として、マインドセットも重要だ。
スキルがあっても「新しい挑戦を避ける」「批判だけをする」「自分の領域に閉じこもる」といったマインドセットでは、スキルを組織の中で生かすことが難しくなってしまう。「まずは挑戦してみる」「仮説やアイデアを提案する」「他の職種を巻き込む」などの適切なマインドセットが必要になる。
一方で、マインドセットを行う、マインドセットを浸透させる、というのは、実はスキルを獲得することよりも難しい場合が多い。数回、議論したり、マインドセットを共有したりして、浸透した気になってしまうことが多いが、人間には現状維持を望む心理、そして、変化しても元に戻ろうとする習性がある。たとえどんな優秀な人でも、だ。そう簡単にマインドセットは定着しない。
そのため、すべてをトップダウンで伝えるよりも、社員を巻き込んだ議論やワークを繰り返し実施し、定着させていかなければならない。共創的に、そして、1度や2度ではなく継続的に取り組むことが重要なのだ。
その3:効果の出ていない施策を続けてしまう
前述のロードマップに沿って社員のリスキリングを進める中で、効果の良くないプログラムや、効果がよくわからないけれど何となく続けている施策もあるかもしれない。実際の効果を知るために、その社員からフィードバックをもらうようにする。
フィードバックを受けて改善しても効果のない施策はやめて、別の施策にリソースを充てるという判断が必要になる。改善や中止を行いやすいよう、いきなり大きな取り組みを始めるのではなく、小さく始め、その組織に適した方法を探りながら適用していくのが良いだろう。
ここまでの失敗例を見てわかる通り、社員リスキリングのためには、獲得したスキルを生かすための、プログラム、組織体制、マインドセットといった、「土壌づくり」が何より重要だ。