NASAやディズニーと取引!京都の「IT金属加工所」が職人ゼロでも世界で戦える理由HILLTOPの本社工場の内部

京都府宇治市の金属加工メーカー、HILLTOP。この企業には、製造業の担い手である「職人」が存在しない。工場には最先端の加工機が並び、24時間連続での無人稼働を実現している。この先進的なビジネスモデルは世界的な機関・企業から注目されており、今ではNASAやウォルト・ディズニー・カンパニー、そして「GAFA」の一角とも取引があるという。そんな同社は、実はベンチャー企業などではなく、1961年の創業時は小さな鉄工所だった。そこから、どのようにして世界で戦えるまでに成長したのか。(ルポライター 吉村克己)

NASA、ディズニーも顧客
「一点物」の試作品加工で成功

 部品や試作品の「加工・開発」ビジネスは、「日本企業ならではの特色がないので海外進出が難しい」という声をよく聞く。

 だが、京都府宇治市に本社を置くHILLTOPはその常識を覆し、2014年にアメリカ・カリフォルニア州に工場を設立した。

 アルミを中心とした金属加工を請け負い、年々成長。試作や加工を手掛ける製品は、半導体関連部品、光学センシング関連部品、ロボット関連部品など、最先端の領域をカバーしている。

 新型コロナウイルス禍の前には、5億円超の海外売上高(当時の為替レート換算)を達成したほか、海外売上高比率も20%に上った。

 コロナ禍によって社員が退職(21人から14人に減った)するトラブルに見舞われ、業績もコロナ前から落ち込んだが、21年に思い切って米ダラスに営業拠点を新設。その効果もあって復調は著しく、22年度は過去最高売り上げを目指せるまでに持ち直した。

 今では、NASA(アメリカ航空宇宙局)、ウォルト・ディズニー・カンパニーといった著名な機関・企業が取引先に名を連ねている。「GAFA」と称される米IT大手の一角とも取引があるという。

 その他の機関・企業も含め、海外での顧客数は累計1200社に上る。受注の大半は一点物の試作品づくりである。

 そんなHILLTOPには、同業他社とは明確に異なる特徴がある。製造業の担い手である「職人」が存在しないのだ。特異なビジネスモデルを展開する同社は、いかにして成長を果たしたのか。