情報収集のための機関が国内外に多数存在
しかし敵もさるもので、日本に入り込んでいたソ連のKGB(国家保安委員会)やGRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)の職員が在日米軍や自衛隊に関する膨大な情報をソ連に送信したり、対ソ情報活動に従事していた自衛官を籠絡し、部内情報を入手したりしていました。
後者にあたる事件は当事者の自衛官の名前から「宮永事件」として知られています。ソ連との情報のやり取りを察知した警察が、宮永に接触していたGRUのコズロフ大佐に出頭要請を出したところ、在ソ連日本大使館の防衛駐在官が出先のジョージア(旧称グルジア)で毒入りウォッカを飲まされるという報復が行われたといいます。
警察は主に国内の情報を収集し、中でもテロにつながる動きがないかどうか、あるいは国内で諜報・情報活動を行い、公務員などから機密情報を奪おうとしているスパイなどの捜査を担当する外事課が置かれています。
外務省は世界各地にある日本大使館を拠点に、その地で情報収集を行っている外交官から上がってくる情報を精査しています。大使館には防衛省や警察庁からも人員が派遣され、特に自衛官で大使館付きの任を受けて派遣されている人を防衛駐在官と呼んでいます。彼らは派遣先の法律の範囲内で情報収集を行っています。
防衛省には1990年代後半まで各部署から上がってくる情報を統括する組織がなく、ようやく情報本部が設置されたのは実に1997年のことでした。
加えて、法務省の外局である公安調査庁も情報活動に従事しています。破壊活動防止法の適用団体を監視するために作られた組織で、国内の右翼団体、左翼団体、カルト集団の他、かつて暴力革命を標榜していた日本共産党を監視しています。現在の公安調査庁は国際テロ対策の観点から対外情報も収集しており、その対象には中国や北朝鮮も含まれています。