中温多湿設定とテレビの不在で
お客さんからは不満続出

 そして、大改革したかったのはうちのメインであるサウナでした。当時のサウナ室の主流は、110℃が当たり前の昭和ストロングスタイル。実は、ニューヨークから帰国するときに、ヨーロッパを周遊したんですが、そこでロウリュ(サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させること)の衝撃を受けたんです。室内の温度が80℃前後でもロウリュをすることによって、湿度が上がりすごく気持ちのよい汗がかける。これだ!と思い帰国してから研究し、ロウリュができるようなサウナ室にしたんです。それによって女性やサウナが苦手な人も入りやすい環境になったと思います。一方で常連さんからは、「寒い!風邪引くよ」ってすごくお叱りも受けましたけどね(笑)。

 中温多湿設定と、テレビを置かなかったことについては、お客さんから不満の声がすごく上がりました。でもオートロウリュと、スタッフが水をかけてタオルを少し振ることで、かなり体感温度が上がるんです。どんなに文句を言われても当時は自分も若かったからか、まったく気になりませんでした。僕だって子供のころから20年以上110℃のドライに入ってましたけど、こっちの方が断然いいじゃないか!っていう根拠なき自信ですよね(笑)。でも、そういった選択肢を増やすことは、その国の「サウナ文化」を豊かにすると思うんです。

 そして、横浜駅直結という恵まれたロケーションなので、老若男女がみんなで楽しめる場所にしたいという想いも強くありました。日本の温浴文化である銭湯も、男女が一緒に行けるのが良さだと思うんです。例えばいま、僕はうちの食堂でお話ししてますけれど、横のテーブルで男女が楽しそうに話している感じって、なんか華があるじゃないですか。うちは上場企業の社長さんから学生さん、お年寄りの方まで、本当にいろんな方がいらっしゃるんですが、こんなにみんなが平等に幸せに健康になれる場所ってあまりないと思うんです。

 コワーキングスペースに関しては、もともとここで仕事をされる方が多かったですし、前々からコワーキングとサウナは相性がいいと思っていました。そこにたまたま文具メーカー「コクヨ」の川田直樹さん(注:コクヨのサウナ部長としてサウナーには有名)が来られ、サウナ×コワーキングのプランを持ってきていただいたんです。そのプランがとても現実に即していました。お客さんからの要望もありましたので、やらない理由はないと、すぐに取り掛かりました。