「うち(ら)は悔しうてたまらん」→蘭子役・河合優実の名演も、ドラマと現実がぶつかった朝8時8分【あんぱん第38回レビュー】『あんぱん』第38回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第38回(2025年5月21日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)

河合優実の名演と豪(細田佳央太)の戦死
不意のタイミングで現実が侵食

 河合優実の名演と豪(細田佳央太)が戦死した哀しみの回。ドラマに没入したいところで現実が侵食してきた。江藤拓農林水産大臣が辞表を提出したというニュース速報のテロップが画面を埋めたのだ(8時8分)。

 江藤大臣はコメ不足のなか、自身はコメを支援者からもらっていて「コメを買ったことがない」というような発言をして国民感情を逆なでし問題になっていた。

『あさイチ』の朝ドラ受けもなく、江藤農大臣に関する情報が淡々と伝えられた。絶好の朝ドラ受けのタイミングであったのに。鈴木アナも博多華丸・大吉はグレーの服で統一していて、豪の戦死を視聴者と共に嘆く気満々だったように感じたが、なんとも不運である。

 朝ドラビギナーの方々のために説明しておくと、朝ドラではこれまでも朝鮮からのミサイル発射のニュースなどのテロップが入ることはあった。地震や災害のときは随時情報を流すためにL字放送になる。

 国民にとって重要な情報を欲している視聴者もいる一方で、ドラマに没入したい視聴者もいるもので、朝ドラ受けがないことを嘆く声も出る。ある種の朝の風物詩である。

 皮肉なのが、こういうニュースが国民全員に関わりあるものであり、それがテレビを介して国民に周知されることである。こういうとき、自分たちがこの国の一員であることを改めて認識するわけだ。

 2025年現在、私たちは国がコントロールしているコメの流通によって右往左往している。