車いすとベッドに横たわる人写真はイメージです Photo:PIXTA

長寿命化、超高齢化が進む日本では、40代以上のビジネスパーソンの多くが「親の介護問題」に直面することになります。国は介護休業制度を定めていますが、筆者は「行政の意図が周知されておらず、自ら介護に携わることで休みを使い果たした結果追い込まれ、どうにもならなくなる人が多い」と指摘します。「親の介護問題に直面した社員に対して、企業がやるべきサポートがある。しかもそれは簡単だ」という筆者の提案とは?(百寿コンシェルジュ協会理事長、社会福祉士 山崎 宏)

40代ビジネスパーソンの2割、
50代の4割が、老親問題に悩んでいる

 私の会社が提供している年中無休の電話相談サービス『お困りごとホットライン(通称:コマホ)』には、年間約600本、月平均50本もの相談が寄せられます。2022年度は全612件の相談があり、そのうち8割以上が50代から、困りごとの内容は老親(80代以上)についてでした。

 夫婦1組当たり4人の親がいるとすれば、そのうち誰か1人くらいは介護問題が起こりえます。ほとんどすべての現役ビジネスパーソンにとって、ある年齢以上になったら、老親問題は避けては通れない大きな問題なのです。

 実際、コマホで行った調査でも、40代のビジネスパーソンの5人に1人、50代は5人に2人が、仕事の合間に老親のさまざまなサポートを行っていると回答しています。具体的なサポートの内容は多い順に、(1)安否確認(定期見守り)、(2)通院同行、(3)買い物などの生活支援、(4)家族介護、(5)役所事務――となっています。

 また、コマホに寄せられた相談のうち、約2割は個別支援(実務代行)サービスにつながります。昨年度の依頼件数トップ3は、(1)認知症などの精神救急支援(入院先の確保)、(2)条件に合致する施設探し、(3)財産管理および財産承継――でした。

 休日や半休で事足りる手伝い程度の作業でも、それなりに面倒なもの。ましてや、入院先や入所先の確保、財産管理や相続のこととなると、仕事や家事をこなしながら対応するのは相当なストレスになるはずです。兄弟姉妹がいればなおさらです。

 相当なストレスでも、ほとんどの人はまずは自力でなんとかしようとします。コマホに電話をしてくる相談者はほぼ全員、「できるところまで何とか自分でやってみよう」と頑張ってみたものの、どうにもならなくなって追い込まれ、コマホにSOSを投げてくる……というパターンです。