リサーチ力 最強のビジネススキル#6

コンサルのトップが考えるリサーチ力とは?特集『リサーチ力 最強のビジネススキル』(全9回)の#6では、外資系コンサルティング企業のA.T.カーニーにおいて史上最年少で代表に就任した関灘茂氏に、「リサーチ力」について聞いてみた。関灘氏は「広義のリサーチの本質は、問題発見や課題を構造化する思考プロセスにある」と、リサーチの神髄について持論を述べる。(聞き手/ダイヤモンド編集部 山本 輝)

コンサルトップが語る
「リサーチ力」の本質

――「いいリサーチ」とは何でしょうか。

 そもそも、リサーチを一番狭く捉えると「調査を実行する部分」を指すと思いますが、実際は前工程として、リサーチの目的や対象の設定、アプローチの設計などが必要になります。調査の実行後も、結果を構造的に整理し、そこから示唆を抽出し、その示唆から次のテーマにつなげて新たにリサーチを行うというプロセスの循環を行う必要があります。

 こうした、リサーチの実施と示唆の抽出という循環を繰り返して、最終的に経営に大きな成果をもたらすことができたリサーチが、経営コンサルタントにとってはいいリサーチだったといえるでしょう。

 また、あるクライアントの事例ですが、われわれの提案で生産性が1.5倍に増え、業界3位から1位に躍り出ることに成功したという企業があります。

 これは、われわれがクライアントと共にいろいろなリサーチを重ねた結果、あるポイントに注目して営業活動を設計すれば、劇的に生産性が高まるという機会を発見できたことによるものでした。これはウェブで検索しても出てこないし、営業の本にも書かれていない、誰も分かっていないことなので、差別化ができたという事例です。

 そういう意味で、リサーチとは単なる「調査を実施する」ことではなく、一般に知られていない「新しい発見を生み出すこと」であるといってもいいでしょう。すなわち、経営にとってのサムシングニューの発見につながるリサーチがあるからこそ、大きな成果につながることがあるということです。

――リサーチを「実行する部分」だけでは、差別化はできないということですね。

次ページでは、関灘氏がリサーチにおいて重要な本質的能力に加えて、リサーチ力を強化するための考え方について述べる。