近年、「頭の回転の速さの象徴」としてお笑い芸人が多くの場面で活躍をしている。そんなあらゆるジャンルで活躍をし続けるお笑い芸人たちをこれまで30年間指導し、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』でも話題になった伝説のお笑い講師・本多正識氏による『1秒で答えをつくる力 お笑い芸人が学ぶ「切り返し」のプロになる48の技術』が発刊された。ナインティナインや中川家、キングコング、かまいたちなど今をときめく芸人たちがその門を叩いてきた「NSC(吉本総合芸能学院)」で本多氏が教えてきた内容をビジネスパーソン向けにアレンジした『1秒で答えをつくる力 お笑い芸人が学ぶ「切り返し」のプロになる48の技術』より、本文の一部を抜粋・再編集してお届けする。
伸び悩む新人と成長するビジネスパーソンの差とは
4月~5月は新人の季節です。皆さんの会社にも新入社員が入ってくるように、私が講師をしているNSC(お笑い養成所)にも芸人を目指して多くの生徒が入学してきます。この季節になると新人だけに目を向けがちですが、同時に、「この前まで新人だった人」も気になります。
なぜなら、新人の頃からしっかりと実力をつけて成長する人もいれば、能力のわりに伸び悩んでしまい、イマイチという人が出てきてしまうからです。しかも、伸び悩んでしまう新人も元々持っている能力はバツグンであることが多く、非常にもったいないのです。これは一緒に仕事をするビジネスパーソンからも同じ話を聞きます。
こういった新人の差がどうして出てしまうのか、これまで1万人の生徒をみてきてわかったことがあります。それは当たり前のことですが、「新人のうちに基礎基本を身につけられるかどうか」でその後の成長が決まるということです。
会社であれ、NSCであれ、多くの場合、入ってきたときの能力に大きな差はありません。しかし、そこから時間をかけていくなかで、「仕事の進め方」や「考え方の作法」など基礎的な能力を身につけておかないと時間が経つにつれてメッキが剥がれていってしまいます。また、新人のうちに成功を収めても、それが「なぜ成功したのか」もしくは失敗しても「なぜ失敗したのか」を考えられるようにしておかないと、いつまで経っても行き当たりばったりの仕事しかできなくなってしまいます。
これらのことを踏まえて、たとえばNSCでは一番最初に芸名やコンビ名をはっきり言うことを徹底的に仕込みます。なぜなら、ただでさえ特殊な芸名を芸人は1回で覚えてもらえない限り、一生仕事に繋がらないからです。どんなにネタが良くても「アイツ名前なんだっけ...?」と思われてしまってはまったく意味がないでしょう。
これまで才能のある新人はたくさんいましたが、こういった基礎的なことを疎かにしてしまう新人はその後もなかなか芽が出てくることはありませんでした。逆に、そこまで才能はなくとも基礎だけを徹底した新人は今でも着実に力をつけています。それほどに新人時代の基礎基本は大事なものです。
ですから、新人の時期に大事なのは応用ができることよりも「基礎基本を徹底すること」なのです。自分が新人だという人も新人を指導する立場の人もぜひ意識してみてください。