セイコー、シチズン、カシオ――。かつてお家騒動などで世間の耳目を集めた日本の「時計御三家」に、今度はビジネスモデル崩壊の危機が迫っている。ロレックスをはじめとする海外メーカーにはブランド力で圧倒的な差をつけられている上、スマートウォッチの台頭で異業種に市場を侵食されている。このままでは、名門3社のグローバル市場におけるプレゼンスは低下するばかりだ。特集『セイコー、シチズン、カシオ 時計“御三家”の黄昏』では、プライド高き内弁慶企業が抱える「時計業界の闇」を描き切る。5月8日(月)スタート、全8回連載。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
#1 5月8日(月)配信
カシオ初の「非創業家」社長が抜てきされた裏側、樫尾家の返り咲きはあるか
電撃的なトップ交代で、時計業界に激震が走った。この4月、樫尾家が代々社長を務めてきたカシオ計算機で初の「非創業家」社長が誕生したのだ。創業メンバーである樫尾四兄弟の子息が経営幹部に名を連ねているにもかかわらず、非創業家のトップが選出されたのはなぜなのか。社長のバトンが再び創業家へ受け継がれることはないのか。トップ人事の裏側に迫る。
#2 5月9日(火)配信
カシオ前社長「パワハラ騒動」の真相、音声流出で内部告発者の意図が曲解された理由
一昨年、カシオは前社長である樫尾和宏氏(現会長)による「パワハラ問題報道」で大揺れとなった。騒動の発端は、樫尾氏のパワハラ発言が収録された音声データが拡散されたこと。内部告発者は「ある意図」を持って音声を流出させたのだが、その意に反して騒動が独り歩きしてしまったのだという。パワハラ騒動の真相を明らかにする。
#3 5月10日(水)配信
同族脱却シチズンvs服部家のセイコーvs樫尾商店、時計御三家の「創業家脱却度」と「実力」
シチズン時計が20年以上前に同族経営から脱却したのに対し、セイコーグループやカシオでは今もなお創業家が威光を放っているのが実態だ。老舗時計メーカー3社の歴史とブランド戦略をひもときながら、同族経営の功罪について徹底分析した。
#4 5月11日(木)配信
時計3社「独り負け」のセイコーが反撃の狼煙!エプソンとの腐れ縁が復活の鍵に
日系時計3社は、そろって時計事業の売上高が急回復している。ところが、各社の利益をつぶさに分析すると、セイコーは“独り負け”状態にある。しかし、業界関係者の見立てでは「将来的にセイコーは“独り勝ち”になる可能性すら秘めている」という。競合より稼げないセイコーのビジネス構造を解明するとともに、「反撃の秘策」を開陳する。
#5 5月12日(金)配信
ロレックスは2年で倍の600万円に高騰!海外高級時計と戦える唯一の「国産ブランド」は?
ロレックスをはじめとする輸入高級時計の価格が高騰し、時計愛好家が「ロレックスマラソン」を繰り広げている。その一方で日本勢は腕時計の「ハイパーインフレ」に付いていけず、グローバル市場におけるプレゼンスの低下が顕著になっている。しかし業界関係者は「海外高級時計に対抗できる唯一の国産ブランドがある」と口をそろえる。玄人も認めるブランドとは何か。
#6 5月16日(火)配信
G-SHOCK一本足のカシオに広がる焦燥、事業撤退ラッシュで「第2の稼ぎ頭」は育つのか
カシオでは発売40周年を迎える時計ブランド「G-SHOCK」が経営の屋台骨となっている。プリンターやデジカメなど撤退を繰り返しているカシオでは、G-SHOCKに次ぐ「第二の稼ぎ頭」の育成が喫緊の課題だ。祖業の電卓や楽器事業は「第二の柱」になれるのか。カシオのビジネス構造が抱える課題を追う。
#7 5月17日(水)配信
シチズンショック!本業の時計そっちのけで「自社株400億円爆買い」の不可解
コロナ禍からのV字回復を謳歌するシチズン時計が、今年に入り最大400億円もの自社株買いに踏み切った。投資家から「こんなことに巨額の金を使っていていいのか」と疑問の声が上がるなど、株式市場は騒然とした。本業の時計事業や事業の多角化などシチズンのビジネス構造を分析しながら、巨額の自社株買いに走った背景と、業績好調がはらむ危険の正体を明らかにする。
#8 5月18日(木)配信
スマートウォッチ躍進にも危機感なし!セイコー、シチズン、カシオ三者三様の「生き残り戦略」
グローバルで広がりを見せるスマートウォッチ。日系時計メーカーは「うちの製品とはバッティングしない」と歯牙にもかけない様子だが、関係者の間では「着実に侵食されている」との嘆きも聞こえる。携帯電話やスマートフォンの普及で危機に直面しつつある日系時計メーカー3社は、どこに活路を見いだすのか。“三者三様”の生き残り戦略を徹底解明し、日本の時計業界が抱える課題を浮き彫りにする。
番外編 5月29日(月)配信
腕時計のネット通販が伸びない理由、セイコー・シチズン・カシオを悩ます「30万円の壁」
コロナ禍で従来の対面販売が激減した時計業界は、EC(電子商取引)に活路を見いだした――。かと思いきや、今でも対面販売重視の姿勢は変わっていない。ECが広がりにくい時計業界特有の事情を解明するとともに、時計“御三家”の販売手法を探る。
Key Visual:SHIKI DESIGN OFFICE, Kanako Onda