セイコー、シチズン、カシオ 時計“御三家”の黄昏#番外編Photo:d3sign/gettyImages、PIXTA

コロナ禍で従来の対面販売が激減した時計業界は、EC(電子商取引)に活路を見いだした――。かと思いきや、今でも対面販売重視の姿勢は変わっていない。特集『セイコー、シチズン、カシオ 時計“御三家”の黄昏』の番外編では、ECが広がりにくい時計業界特有の事情を解明するとともに、時計“御三家”の販売手法を探る。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

伸び悩む腕時計のEC市場
「30万円の壁」の正体とは

 コロナ禍による外出制限は、あらゆる分野の対面販売の機会を奪った。その影響で急速に伸びているのがEC(電子商取引)需要だ。

 経済産業省が公表している「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」によると、物販系分野のB to CのEC市場規模は、2021年に13兆2865億円と、コロナ前の19年比で32%も増加している。

 腕時計も例外ではない。コロナ禍による対面販売の激減(日系時計大手の売り上げ減については、本特集の#4『時計3社「独り負け」のセイコーが反撃の狼煙!エプソンとの腐れ縁が復活の鍵に』参照)により、時計メーカー各社はECの強化に動いた。

 ところが、腕時計は他の商品に比べ、ECの普及が進んでいないようだ。関係者によると、そこには「30万円の壁」が立ちはだかっているという。