セイコー、シチズン、カシオ 時計“御三家”の黄昏#8Photo:123RF

グローバルで広がりを見せるスマートウォッチ。日系時計メーカーは「うちの製品とはバッティングしない」と歯牙にもかけない様子だが、関係者の間では「確実に侵食されている」との嘆きも聞こえる。携帯電話やスマートフォンの普及で危機に直面しつつある日系時計メーカー3社は、どこに活路を見いだすのか。特集『セイコー、シチズン、カシオ 時計“御三家”の黄昏』(全8回)の最終回では、“三社三様”の生き残り戦略を徹底解明し、日本の時計業界が抱える課題を浮き彫りにする。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

スマートウォッチはライバルにあらず?
日系時計“御三家”の戦い方とは

 携帯電話やスマートフォン(スマホ)など、これまでも数々の強敵に見舞われてきた時計業界の前に、新たな強敵が立ちはだかっている。アップルウォッチをはじめとするスマートウォッチだ。

 スマートウォッチは、スマホと連携可能なウエアラブル端末のことで、時刻を知るのはもちろんのこと、脈拍や睡眠管理、キャッシュレス決済など、機能は多岐にわたっている。

 既存の時計メーカーにとって強力なライバルの登場に、時計企業の関係者からは「確実に侵食されている」と悲痛な叫びが聞こえてくる。

 しかし、である。こうした健全な危機意識を持つ社員がいる一方で、時計大手各社の間で楽観論が大勢を占めているのも事実だ。複数社の社員から「用途が異なるのでうちの製品とはバッティングしない。スマートウォッチは頻繁に充電しないといけないし、脅威だとは思わない」との声が上がっており、歯牙にもかけない様子なのだ。

 そのため日系時計メーカー各社には、スマートウォッチへ本格参入する動きは見られない。

 スマートウォッチと正面からぶつかる姿勢を見せない日本勢は、いったいどのような成長戦略を描いているのか。セイコー、シチズン、カシオの日系時計“御三家”の時計事業を分析したところ、それぞれの特徴を生かした戦い方をしており、まさに“三社三様” であることが明らかになった。

 それでは、グローバルで巨大市場を形成しているスマートウォッチの動向と、御三家の戦略について、次ページ以降で詳しく見ていこう。スマートウォッチは、時計メーカーにとって本当に脅威ではないのだろうか。