日本で検討されるべき
インテリジェンス体制とは
こうした中、日本のインテリジェンス体制をより強固にすることは喫緊の課題だろう。
主要国において、情報機関は必須のものであるが、日本において強力な情報機関は存在しない。
例えば、対外情報機関(外国の軍事・経済・政治・外交等の情報を収集する機関)でいえば、米国はCIA、イギリスはMI6、ロシアはSVRやGRU、中国は国家安全部や統一戦線工作部といった組織がある。
また、防諜活動(カウンターインテリジェンス)を行う機関としては、米国はFBI、イギリスはMI5、ロシアはFSB、中国は公安部がある。
一方、日本では、内閣情報調査室が情報コミュニティー省庁を統括しているが、情報源の大半は各情報コミュニティー省庁によるところが大きい。公安調査庁は小規模組織であり、国内外の情報収集を行っている。外務省は外国の情報収集を行っているが、情報活動に注力しているわけではない。また、防衛省は軍事・技術的な情報収集が主である。そして、警察内の公安は国内における防諜活動が中心である。
このように、日本では、専門・専任的で強固な情報機関は存在しない。
日本としては、強固な情報機関を設置し、安全保障に密接に関する情報活動を強化するよう、今一度再考すべきである。米国や英国等に頼った情報収集体制では、現在の国際情勢においてあまりにも危険である。
そして、同時に各種法整備(セキュリティ・クリアランス、スパイ防止法)を並行して検討・議論しなければならない。
日本のインテリジェンス体制の課題は山積しているが、民間企業も含めて、感度を高くして、関心を持ち続け、インテリジェンス・コミュニティーを醸成しなければならない。
(日本カウンターインテリジェンス協会代表理事、元警視庁公安部外事課警部補 稲村 悠)