文章に(笑)を付ける人の心理とは、「w」「ワラ」「藁」どう使い分ける?写真はイメージです Photo:PIXTA

LINEやSNS、時にはメールでも使われ、面白さやおかしさを表現する「(笑)」。「w」「草」「ワラ」など同じ意味の用法と思われるものは多岐にわたるが、我々はどのようなニュアンスでそれらを使っているのだろうか。法政大学教授で言語学者の椎名美智氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)

(笑)を使うのは
主張を緩和したいから?

 LINEやSNSなどテキストベースのツールを利用する人の多くは、一度は「(笑)」と打ったことがあるだろう。中にはどんな文章にも癖で付けてしまう人もいるかもしれない。

 ただ、中には「面白くもないのになぜ(笑)を付けているの?」と不思議に思ってしまう文章もあり、「(笑)」の使い方に若干のモヤモヤを感じている人もいるはずだ。場合によっては、「なに笑ってんだ?」と予期せぬ衝突が発生するリスクもあるため、意外と「(笑)」の使い方は難しい。

 椎名氏はコミュニケーションのそもそもの性質をこう話す。

「コミュニケーションにおいて、言葉の意味が伝える情報は全体の3分の1にすぎず、残りは声のトーンやジェスチャー、表情、服装、文脈などの非言語コミュニケーションといわれています。一方、打ち言葉(LINEやメールなど電子機器へのテキストの入力で表現される言葉)は、文字しかメッセージを伝える媒体がないため、そうした言葉以外の要素を補うための手段として『(笑)』の一連の文字や語句が使用されるのだと考えられます」

 椎名氏が言う一連の文字や語句とは、「笑」「w」「草」「草生える」など「(笑)」から派生したと思われるものを指す。椎名氏によれば、正確な時期は不明だが、それらは「(笑)→笑→w→草」という変遷をたどっていると推測されるという。

「文章は『命題』+『モダリティー』(内容や聞き手に対する話し手の判断や態度を表す言語表現)という要素で成り立ちます。私たちは、『である』『かもしれない』『ですかね』などによって、命題に対する確信度を示したり、『よ』『か』『ね』などの終助詞の使用によって、主張の強さを調整しています」

 他にも、受け手への配慮表現、お互いの心理的距離の調節なども、文頭や文末のモダリティ部分で行っており、今回の主題である「(笑)」も、この部分と密接な関係があると椎名氏は考える。

「『(笑)』から派生する一連の語句も、強い主張をした後に『(笑)』などを付けて和やかな雰囲気を出して語気を弱めたり、冗談風にして終わることで相手との距離を縮めようとしたりなどの用法があると考えられます」

 実際、椎名氏の指導するゼミ生・石毛優花さんが2016年に大学生70人(男女35人ずつ)に調査を行ったところ、約4割が「自分の発言を緩和したい」と回答したという。