同社は決算説明会などとは別に、ESG説明会を開催している。環境・社会については執行役社長が説明するが、ガバナンスについて説明するのは独立社外取締役で取締役会議長だ。

 同社は2030年に「CO2約1億トン相当の温室効果ガスを削減、世界で6億人に水を届ける」など野心的な社会・環境価値創造を掲げているが、これにポンプ事業における標準ポンプの受注採算改善や、カスタムポンプのアフター比率上昇が相乗効果を発揮すれば、企業価値向上の確度はより高まる。

【ケース2】東京エレクトロン
企業価値向上への道筋を明確化
ストーリーのある開示がすごい

 半導体製造装置製造業の東京エレクトロンは、ESG経営の継続的な高度化・強化を進めている。

 2050年までの長期環境目標を発表する一方で、特定したマテリアリティの重点テーマごとにサステナビリティ年度目標についても進捗状況を開示している。各施策にどれだけのリソースを投下するのか、資源配分の観点が盛り込まれているため、投資家にとって企業価値向上が想起しやすい。

 こうしたサステナビリティ目標を統括する取締役会における独立社外取締役の割合が、2019年からの3年間で27%から50%に増加するなど大きく改革されている。取締役会評価では、過年度で課題とされた項目について、今年度はどのように取り組んだのか改善状況を進んで開示している。

 もともと同社は、半導体業界有数の製品構成の広さや生産拠点・能力の大きさから、WFE市場全体との連動性が高く、ボラティリティが大きい傾向がある。今後こうしたサステナビリティへの取り組みが評価されることで、さらなる企業価値向上につながる可能性が高い。同社はダウ・ジョーンズ、FTSE、MSCIなどの代表的なESG指数に選定されている。