【ポイント3】
ステークホルダーとの積極的な対話

 企業向けのコーポレートガバナンスコードは、そもそも市場・投資家向けのスチュワードシップコードと「対」の存在であり、コードを順守する両者に対話を促し、企業価値向上を通じて国富形成を企図して制定された背景がある。

 連載第3回でも指摘したが、ESG経営は閉じたものであってはならない。ESG情報は財務以外の全てといえる。自社の誇るべき非財務資本を、統合報告書や自社Webサイトなど任意のツールも最大限に活用して開示したうえで、ステークホルダーとの対話に臨んでいただきたい。

 本稿で紹介した2社に共通するのは、ESGに関する社内の取り組みをステークホルダーに積極的に開示していく「攻め」の姿勢であった。

見据えるべきは次期TOPIX再編
TOPIX銘柄数上限設定時代が到来する

 本稿執筆時点で東証株価指数(TOPIX)は続伸しており、1990年以来の高値水準となった。前掲した東証によるPBR1倍割れ企業への改善を促すレターも、期待醸成に貢献しているようだ。

 今後東証が、さらなる企業価値向上を促すインセンティブを企業に提示するとした場合に考えられることは何か。それはTOPIXの組み入れ企業の上限設定と、入れ替えの仕組み化ではないだろうか。

 現在はプライム上場企業であれば、TOPIXに自動的に組み入れられる。もちろんプライム市場への上場維持要件を充足するための経過期間中であり、すでに改善に取り組んでいる企業があることは認識している。しかし、さらに外国資本を日本の株式市場に呼び込もうとすれば、米国のS&P500のように組み入れ企業を制約するという大胆な改革が、今後数年で行われることは想像に難くない。

 そうした大きな変革が訪れたときに、ESG経営に取り組み続けた企業と、そうでない企業の優勝劣敗が明確になることは必然だ。もちろん本連載を最後まで読んでくれた方は、ESG経営で「勝つ」ことを選んでいただけると信じている。

(フロンティア・マネジメント マネージング・ディレクター 本橋陽介)