先進B2B企業に学ぶ、来るべき「東証大変革期」に勝ち残るESG経営B2B領域のESG先進企業は高い企業価値を誇る(写真はイメージです) Photo:PIXTA

米国内で
政治問題化したESG

 米国では2024年の大統領選を見据えて、反ESGの動きが顕在化している。米金融機関ブラックロックはESG推進の旗振り役とみなされていたが、テキサス州の「ブラックリスト」に指定されたことを受け、今後反ESG投資家が同社への投資を引き上げるなど事業のリスクとなる可能性に言及した。

 欧州では2022年2月のウクライナ危機以降のエネルギー不足を受けて、EUタクソノミーの原案を見直し、脱炭素を段階的に進める「トランジション」路線に転換しつつある。

 各国の動向は、残念ながらESGが政治問題化した帰結であって、あくまで一過性の現象と考えるべきだ。価格決定や配分を最適化するという資本主義の原則に回帰することで、米国や欧州でもルール形成が加速化するに違いない。ESG対応は不可逆なのだ。

 最終回となる連載第8回は、B2B領域の日本企業の先進事例を紹介したうえで、改めてESG経営に取り組むことの意義をレビューしつつ、今後日本市場に訪れるだろう大変革について、フロンティア・マネジメントの考えを論じる。

B2B企業に学ぶ
ESG先進事例

 まずは、ESG経営で名高い代表的なB2B企業の取り組みを紹介しよう。

【ケース1】荏原製作所
ガバナンス実効性のお手本
ESGにおける「G」がすごい

 ポンプ・タービンなどの風水力機械、浄水設備・排水処理などの環境装置を製造する荏原製作所では、2030年度に向けた長期ビジョン「E-Vision2030」を策定し、社会・環境価値と経済価値を両立させた企業価値向上を進めている。

 日本企業の中では先進的なガバナンス体制で知られる同社では、取締役会の過半、指名・報酬員会の過半を社外取締役が占めている。また、執行役兼務の取締役が参加しない社外取締役会議の開催や、サステナビリティ委員会への独立取締役陪席など、その実効性を高めるための工夫を埋め込んでいる。