まず、植田和男新総裁の体制になった日本銀行は、当初に予想された以上に金融緩和継続の姿勢を明確にしている。このこと自体が好材料であることに加えて、この政策がもたらしている円安傾向も日本企業の業績にとってプラスだ。

 日本経済が先進諸国に遅れてコロナ禍から本格的に回復しつつあることに加えて、上場企業の業績が絶好調である。

 また、米シリコンバレー銀行の破綻以来、銀行の経営状態に不安がくすぶる米国に対して、日本の銀行に当面同様の問題はないし、政府債務の上限を巡る国債のデフォルト懸念のような問題もない。

 以上のような背景から、日本株は相対的に買われやすくなっているが、「グローバルに運用されている資金」が主導する株高なので、米国の株価が崩れるような事態になると連れ安が避けがたい。今後さらに大きく上昇するためには、米国をはじめとする世界の株価上昇が必要だと見ておくことが妥当だろう。良くも悪くも、日本株は、ローカルマーケットとして組み込まれている世界株式の一部なのである。

日本の地政学的有利性
「日本は安全」という判断

 読者の中には、先日来日した著名投資家、ウォーレン・バフェット氏、あるいはそのフォロワーたちが日本株を買っているのではないか、あるいは、バフェット氏の昨今の日本株に対する強気発言に提灯(ちょうちん)を付ける「バフェット効果」が影響しているのではないかと思う向きがあるかもしれない。

 しかし、この間、バフェット氏の会社が日本株に大量の買いを入れている事実はなさそうだし、バフェット氏およびバフェット信者たちは「上値を追って買う」ような買い方をしない。短期的な株高を「バフェット効果」で説明しようとすることには、少々無理があるように思える(いかにも素人くさい説明でもある)。

 しかし、中長期的な日本株の行方を考える上で、バフェット氏が指摘している事実は重要であるように思われる。それは、投資先を地政学的に考えた場合に、「台湾は危ないが、日本は安全だろう」という判断だ。