中国との関係には、今後不測の偶発的事態の発生も含めて心配の残るところだが、最終的に中国が日本の本土まで攻め入ってくるような事態は考えにくい。日本企業への投資は、台湾企業への投資よりも安全だと考えていい。そして、日本企業には米国陣営のサプライチェーンを担うことから生じるビジネスチャンスがあるはずだ。これは、日本株への投資の中長期的な好材料となり得る。

 こうした意味で米中の対立は日本企業にとってのチャンスであるとしても、経済的な利益全般を考えたときに、日本が中国との対立を先鋭化させることは賢くない。

 先頃、一方の陣営にばかり肩入れすべきでないと述べたフランスのエマニュエル・マクロン大統領の発言は、わが国では半ば失言扱いであった。ただ、欧州にとってだけではなく、日本にとっても現実的に望ましい方向性を指摘した本音であったように思われる。

「米国型」の後追い余地が
株価や時価総額の上昇材料に

 中長期的な視点で日本株が買えるもう一つの材料として、日本企業のコーポレートガバナンスが遅れを伴いながらも、米国型の株主利益優先のものに近づく「大きな余地」が存在することを指摘したい。

 率直に言って、日本の上場企業の経営者たちは、巨額の報酬を得る米国をはじめとする海外企業の経営者たちが羨ましくて仕方がない。

 これまでも、社外取締役を賛成要員として活用しながら(社外取締役がこれ以外に経営の役に立っている形跡はほとんどない)横並びを意識しつつ、従業員の賃金を抑制する一方で、社長その他の幹部が受け取る役員報酬の水準を上げてきた。これからも、自社株を持ったり、自社株のストックオプションを持ったりしながら、「株主還元」の名を借りつつ、自分の報酬を増やしたいとのインセンティブを彼らは持っている。

 米国では、経営者たちの強欲が弊害として問題視されるレベルに達しつつあるが、日本ではまだ「株主本位のコーポレートガバナンス」として投資家から歓迎されつつある段階だ。