バフェット氏は、今年に入って台湾の半導体製造大手TSMCに対する投資を引き揚げる一方、日本に対しては大手商社株を買い増ししている。

 台湾は中国の一部である一方、日本は中国の一部ではない。米中の対立が先鋭化する可能性がある中で日本は、今後中長期的に米国陣営のサプライチェーンの一翼を担うことが期待される。

 米国のジョー・バイデン大統領は、台湾の現状に対する中国の武力介入の可能性に対して、米国が武力介入する可能性を排除しないといった趣旨の不規則発言を、おそらくは半ば意図的に行っている。ただ、米国も日本も、公式には「一つの中国」を認める立場だ。この立場では、台湾は中国の内政問題だ。

「台湾有事は、日本有事」
という掛け声の危うさ

 中国が台湾を強引に武力併合しようとする可能性はそれほど大きくないと筆者は考えるが、何らかの武力衝突的な事態や、そこまでいかなくても緊張の高まりが生じたときに、米国がウクライナを支援するような調子で台湾に武器の供与などを行うと大きな問題になるだろう。また、万一米国が武力介入するような事態になると、米国に基地を提供している日本も巻き込まれる事態になり得る。

 これは、何としても避けるべき事態だが、「台湾有事は、日本有事」という掛け声の下に、あえてウクライナ的な事態を想起させようとする日本の現政権の立場には少々心配な面がある。

 率直に言って、岸田政権は、緊張を高めて米国から武器を買いやすくして、米国の軍産複合体にこびを売っているのだと筆者は考えているが、台湾に対して日本が「前のめり」になりすぎることには注意しておきたい。

 先般の先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を迎えるなど表面的には賑やかに行われて岸田文雄首相は満足したかもしれない。しかし、原子爆弾の被爆地である広島県で行われたにもかかわらず、平和の希求よりも軍事同盟の強化が強調された奇妙なものだった。