非製造業で賃上げ率が高い、「人手不足」倒産も増加
5月19日、経団連は「2023年春季労使交渉・大手企業業種別回答状況」を公表した。加重平均ベースでみると、回答92社の定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率は3.91%に上昇した。昨年の実績(2.35%)からの上昇幅は大きい。
業種別にみると、製造業(85社、3.88%)よりも非製造業(7社、4.02%)の賃上げ率が高い。ウィズコロナの経済と社会運営によって国内外で人の往来が活発化している。それに伴い、飲食、宿泊、交通などサービス業を中心に労働力の確保が喫緊の課題だ。
5月17日に帝国データバンクが公表した「企業における人材確保・人手不足の要因に関するアンケート」からも、賃金を積み増して優秀な人材の確保を急ぐ企業の増加が確認できる。その要旨によると、人手不足が発生していない要因として、回答企業の51.7%が「賃金や賞与の引き上げ」を挙げた。一方、「働きやすい職場環境づくり」「定年延長やシニア再雇用」の回答割合はいずれも30%台だった。
逆に賃上げを実施することが難しい場合、事業の継続に行き詰まる企業が増えている。東京商工リサーチによると、4月、人手不足に関連した企業の倒産が12件あった。要因として、人件費の高騰は大きい。
なお、日本商工会議所の早期景気観測の4月調査結果によると、「22年度、予定した採用人数を確保できなかった」と回答した企業が、全体の52.4%に達した。競合他社を上回る賃金を提示できない場合、目先の事業運営に必要な人員を確保できず淘汰される企業が増えそうだ。
人手不足に直面するのは民間企業だけではない。政府は国家公務員の給与を引き上げようとしている。わが国全体で、事業の継続、中長期的な収益の増大などを目指し、人材争奪戦は激化している。