部長・課長の残酷 給料・出世・役職定年#2Photo by Reiji Murai,AFP=JIJI

パナソニックホールディングスの中間管理職が最も気にしているのは「役割等級制度」だ。部長・課長の肩書ではなく、この等級で報酬が決まるからだ。だが持ち株会社傘下の一部では、この “絶対基準”を廃止する動きが出始めた。その狙いは何か。特集『部長・課長の残酷 給料・出世・役職定年』の#2では、ソニーグループとの報酬格差を決定付けているパナソニックの役職等級制度の実態に迫ろう。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

「週刊ダイヤモンド」2023年4月1日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

パナソニックで進む昇格試験の見直し
ソニーと格差目立つ「役割等級制度」廃止も

 パナソニックホールディングス(HD)傘下で、課長・部長級の「基幹職」と呼ぶ管理職に課される昇進試験を簡素化・廃止する動きが出始めた。

 同社の管理職試験は、半年前から土日をつぶしてプレゼン練習や試験課題の準備を行うのが通例だ。このため、子育て世代の女性が課長・部長になるのを敬遠するという本末転倒な事態に陥っていた。

 内部試験への対策で若手社員にかかる負担が重いなら、これを減らさなければならない――。

 巨大なパナソニックグループで、こうした“柔軟”な対応ができたのは、同社が2022年4月に持ち株会社制に移行したことが大きい。グループ傘下に自主責任経営を求める中で、HDの各子会社で独自の人事制度を制定しようとする動きが出始めたのだ。

 結果、グループ傘下では、管理職試験の見直しにとどまらず、同社の部長・課長の報酬を決める「役割等級制度」の廃止にまで乗り出す子会社が出始めた。

 実は、パナソニックの中間管理職にとって役割等級制度は「部長」「課長」の肩書より重要だ。同時にこの制度は、業界最高水準の報酬を誇るソニーグループとの格差を決定づけている。次ページでは、両者の報酬格差とともに、絶対基準の役割等級制度を廃止する動きの狙いを探る。