2%インフレ達成の鍵
企業の賃上げと価格戦略
植田日銀総裁の任期5年の間に、2%インフレ目標の安定的な達成への道筋が見えてくるかは予断を許さない状況だ。
日銀も認めるように、インフレ率は年後半から一旦は急速に低下する。資源価格と円安の落ち着きを受けて、供給サイドのインフレ圧力が後退してくるためだ。
本当の勝負はその後だ。一旦低下したインフレは、ふたつの原動力によって再び上昇に転じることは間違いない。しかし、その強さについては大きな不確実性が残る。
不確実性のひとつは、人手不足を背景とした企業の賃上げが、どの程度のペースで続くかということだ。今年の春闘の賃上げ幅は、インフレ手当という面もあって予想を上回るが、これを来年以降も続けられるほど儲かっている企業は多くない。
また、人手不足感の強い若手などにメリハリの効いた賃上げを行うには、終身雇用と年功序列の硬直的な賃金体系という雇用システムの見直しが必要だ。これには相応の時間がかかる。
もうひとつの不確実性は、企業の価格戦略の変化だ。過去20年以上続いた「価格据え置きが当たり前」というデフレ均衡を打ち破る企業がどれだけ出てくるかが鍵を握る。