新型コロナウイルス禍が落ち着き始め、企業業績への影響も緩和されてきた。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった難題がいまだに日本企業を苦しめている。その状況下でも、企業によって業績の明暗が分かれているが、格差の要因は何なのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は第一生命ホールディングス、かんぽ生命保険、T&Dホールディングスの「生命保険」業界3社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
経常収益の面では
T&Dの圧勝に見えるが…
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の生命保険業界の3社。対象期間は2022年11月~23年3月の直近四半期(3社いずれも23年1~3月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・第一生命ホールディングス
増収率:マイナス33.9%(四半期の経常収益1兆6752億円)
・かんぽ生命保険
増収率:マイナス3.2%(四半期の経常収益1兆5815億円)
・T&Dホールディングス
増収率:17.8%(四半期の経常収益1兆934億円)
生命保険業界の3社は、T&Dホールディングスは2桁増収となった一方、残る2社は減収と明暗が分かれた。
中でも第一生命ホールディングスは、これまで3四半期連続で増収を達成していたが、23年1~3月期は一転して大幅な減収となった。
かんぽ生命保険は第2~3四半期(22年7~9月期、同年10~12月期)にかけて増収が続き、19年に発覚した「保険の不適切販売問題」による大打撃から立ち直りつつあるかに見えたが、23年1~3月期は再び減収に沈んだ。
23年3月期の通期決算を見てみると、第一生命ホールディングスは第1~3四半期の“貯金”で第4四半期の減収をカバーし、経常収益が前期実績を上回った。T&Dホールディングスも前期比で2桁増収となったが、かんぽ生命保険は減収という結果だった。
一連の経常収益の推移からは、第4四半期・通期の両方で増収を果たしたT&Dホールディングスの好調ぶりが目立つ。
だが、通期累計の利益面に目を向けると、経常収益とは全く違った構図が浮かび上がる。何しろ、好調だったはずのT&Dホールディングスが1322億円の最終赤字に転落しているのだ。
第一生命ホールディングスとかんぽ生命保険は最終黒字を確保したものの、2桁の最終減益(前者は前期比53.0%減、後者は同38.2%減)に沈んでおり、この2社も「利益面では勝ち組」とは言い難い状況だ。
3社はなぜ、こうした状況に置かれているのか。次ページでは、各社の増収率の時系列推移を紹介するとともに、減益要因について解説する。