時価総額を倍増させると意気込みを示したのは、今年4月に第一生命ホールディングスの社長に就任した菊田徹也氏。資本コストを主体とした財務戦略を基に、“一石二鳥”の策をもって達成する腹積もりだ。特集『決算書で読み解く! ニュースの裏側 2023夏』(全27回)の#7では、その具体的な戦略の中身を解き明かしていこう。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
時価総額を6兆円に倍増させる
第一生命HD新社長の財務戦略
今年4月、第一生命ホールディングスの社長に就任した菊田徹也氏は、「2026年度末に時価総額を倍増させて6兆円を目指す」とぶち上げた。現在、グローバルトップティアの保険グループの時価総額は、8~10兆円。その水準を目指すために、まずは6兆円を視野に入れているというわけだ。
だが、現在の第一の時価総額は約2.4兆円。つまり、時価総額を倍増させようというわけだが、どうやって実現しようというのか。
その方策は、第一が10%と認識している資本コストを低減させていく一方で、現状5.0%にとどまるROE(自己資本利益率)を上昇させて、両者を逆転させるというものだ。
資本コストとは、資金の出し手が企業に対して求める期待リターンのこと。つまり菊田社長は、お金を出してくれた「資金の出し手の期待=資本コスト」に対し、現在は事業によるリターンが下回っているが、それを将来的に逆転させることで、企業価値を表す時価総額を倍増させたいと言っているわけだ。
この資本コストとは、18年にコーポレートガバナンス・コードが改定された際に盛り込まれた言葉であり、今やROEやPBR(株価純資産倍率)と共に押さえておきたい重要なキーワードだ。
では、第一はどうやって資本コストを下げるのか。さらに、資本コストを下げることが生命保険ビジネスに有益な影響を及ぼし、それが資本効率の向上につながるという“一石二鳥”の財務戦略のからくりとは何か。次ページで開陳していこう。