決算書で読み解く! ニュースの裏側 2023夏#22Illustration by Yuuki Nara

信用調査マンはどうやって企業倒産の兆候を見抜くのか。特集『決算書で読み解く! ニュースの裏側2023夏』(全27回)の#22では、黒字決算が続く「優良企業」の突然の経営破たんを例に、プロが倒産予備軍の見抜き方を解説する。

「週刊ダイヤモンド」2023年6月24日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

黒字続きの「優良企業」が
突然の破産申請

 2023年1月、投資用物件などの建設で業績を拡大していたA社の建設現場が突然ストップ。一切の連絡を絶ったまま、その数日後、破産を申請した。

 地主や投資家からマンションの建設を受注し、工事は外注で対応するビジネスモデルの成長株だった。狭い敷地の物件に特化し、バリエーション豊かな企画力や提案力を武器に、売り上げはこの10年で数億円から100億円を超えるまで右肩上がり。ずっと黒字決算を続ける優良企業でもあった。

 売り上げを伸ばすと、「業績は好調」と周りは評価する。だが、受注すればするほど入金と支払いのズレが広がり、資金繰りが悪化する構図にはまっていた。

 もともと施主からA社への入金は着工、上棟、竣工時の3分割が多かった。だが施主との力関係や激しさを増す同業他社との競合により、次第に施主の都合に合わせて入金は後ろ倒しになっていった。

 外注先への支払いは、施主からの入金を待つわけにはいかず、入金より支払いの先行が恒常化した。慢性的な資金不足に陥ったところに、人手不足や資材高などが重なり、資金繰りは力尽きた。

 事業を停止したその日、各現場には朝から外注業者や工事を発注した施主らが押し寄せ、混乱を極めた。成長企業の仮面が剥がれた瞬間でもあった。

 では、一見すると「優良企業」の倒産リスクをどう見抜けばよいのか。以下、定量・定性分析の両面から、その具体的な方法について、解説したい。