決算書で読み解く! ニュースの裏側 2023夏#23Photo:PIXTA

「今さら聞けない」というくらい重要な指標となった「ROE(自己資本利益率)」。なぜ重要なのかを理解できないと、ビジネスパーソンは会社で出世ができなくなり、企業は市場から淘汰される構図が出来上がっている。『決算書で読み解く! ニュースの裏側 2023夏』(全27回)の#23では、なぜ「利益が出ていればOK」という感覚ではダメなのかを解説する。(ダイヤモンド編集部副編集長 鈴木崇久)

「週刊ダイヤモンド」2023年6月24日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

ROEを理解できない人が
「淘汰」される理由

 会計・財務のことが分からないとまずい──。日本中の企業とビジネスパーソンにそう思わせたきっかけの一つが、2014年に経済産業省から発表された「伊藤レポート」だ。

 一橋大学の伊藤邦雄教授(当時)を座長とするプロジェクトがまとめた最終報告書では、世界の投資家に認められるためには、自己資本利益率(ROE)について最低でも8%を上回ることに日本企業がコミットすべきだと明言された。

 その結果、ROE8%以下の企業には「どうやってROEを上げるのか」というプレッシャーが投資家などからかかり続けた。日本企業は向上策を真剣に考えざるを得なくなり、そこで働く人々も日々の仕事の中で、ROE向上の視点を経営者や上司から求められることになった。

 こうしてROEを理解できない企業や人は、市場から淘汰され、会社で出世できなくなるという構図が出来上がったのだ。

 では、ROEとは何なのか。ROEの台頭で何が変わったのか。