[激変]生保・損保・代理店 保険大国の限界#10Photo by Yoshihisa Wada

2023年4月に就任した第一生命保険の隅野俊亮社長。23年3月期は基礎利益37%減、新契約年換算保険料38%減となり、厳しい船出となった。特集『[激変]生保・損保・代理店 保険大国の限界』(全22回)の#10では、就任して以来初となるインタビューで、業績回復への意気込みについて話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 藤田章夫、片田江康男)

厳しい業績の中での船出
就任から2カ月の隅野社長を直撃

 2020年10月、山口県周南市の第一生命保険元営業職員(生保レディー)による、19億円超に及ぶ金銭詐取事件が発覚。それ以来第一生命は、当時社長だった稲垣精二氏が先頭に立って原因究明を行い、社を挙げて管理体制の強化、見直しに取り組んできた。

 ところが金銭詐取事件は、日本生命保険や明治安田生命保険などからも、せきを切ったように続出した。相次ぐ不祥事に、監督官庁である金融庁は激怒し、管理体制強化のためにガイドラインの制定を求めるほどだった。当初は抵抗していた生命保険協会も、業界を挙げてコンプライアンス順守と管理体制の見直しに取り組まざるを得なくなった。

 その成果が、23年2月に生命保険協会が公表した「営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理態勢の更なる高度化にかかる着眼点」(着眼点)だ。

 着眼点の公表をもって、業界を挙げた取り組みは一定の区切りがついた格好だ。それと同時に、第一生命では23年4月、稲垣社長が会長に退き、隅野俊亮氏が社長に就任。これまで取り組んできた「経営品質刷新プロジェクト」を引き継ぐことになった。

 ただ第一生命は、この2年半は販売目標を取りやめるなど営業にドライブをかけてこなかったため、業績が振るわない。23年3月期決算では、新契約獲得が大幅に落ち込み、本業での利益水準を表す基礎利益は前年比37%減と、大手生保の中で最大の落ち込みとなっている。

 社長就任から約2カ月、隅野新社長は第一生命をどう立て直していくのか。就任後、メディア初登場となるインタビューをお届けする。

自らを見つめ直した2年半
22年度の新契約は大幅減

――営業職員チャネルの改革は現在、どのような状況でしょうか。

 22年度決算で、当社の業績が低迷したことは論をまたないと思います。背景には新型コロナウイルス感染症の影響もありましたが、不正事案をきっかけに足元を見つめ直したことがあります。

 経営品質刷新プロジェクトを通して経営品質を高め、コンプライアンス順守を徹底し、自らを見つめ直すプロセスを行ってきました。さまざまなコンプライアンスのチェック、組織運営の在り方、さらに営業目標についても、かなり抑制的な運営を行ってきたのがこの2年間です。

 そうしたさまざまな要因と相まって、残念ながら新契約の業績は、非常に大きく落ち込む結果になった。他社との比較でも大きく落ち込んでいます。

――具体的にどのような取り組みを行ってきたのでしょうか。