新型コロナウイルスの感染拡大を背景にしたコンテナ運賃の高騰で、2期連続の最高益を達成した海運大手3社。青息吐息だった業界3位の川崎汽船も大復活を遂げた。特集『決算書で読み解く! ニュースの裏側 2023夏』(全27回)の#8では、記録的に積み上がった同社のキャッシュの“使い道”を競合と比較。成長よりも株主還元重視の姿勢が浮かび上がる。(ダイヤモンド編集部 梅野 悠)
コンテナバブルで海運3社が2期連続で最高益
青息吐息だった川崎汽船の財務はV字回復
海運大手3社は、2023年3月期に2期連続で最高益を達成した。背景には、新型コロナウイルス感染拡大に端を発した物流混乱による世界的な海運需給の逼迫がある。コンテナ運賃が跳ね上がり、各社に記録的な利益をもたらした。
空前のコンテナバブルに最も救われたといえるのが、業界3番手の川崎汽船だ。
同社は高値で契約した用船料負担や市況悪化などで長く低迷が続き、コロナ禍前の19年3月期の最終損益は1111億円の赤字となった。
それから今回のバブルを経て、23年3月期の最終損益は6949億円の巨額黒字を計上し、10.9%まで低下していた自己資本比率も73.8%まで急改善した。
まさに瀕死の状態から大復活を遂げた川崎汽船。次ページでは、同社が稼ぎ出したキャッシュの“使い道“を競合の日本郵船と商船三井と比較。すると、成長投資を進める2強に対して、株主還元重視ともいえる異なる戦略が浮かび上がる。