銀行・信金・信組 最後の審判 #2Photo:123RF

コロナ禍に国が打ち出した実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済が今夏以降、本格化する。金融機関にとっては、安定的で“リスクフリー”のおいしい貸し出しが剥がれ落ちることを意味する。ダイヤモンド編集部は独自アンケートで、地方銀行のゼロゼロ融資残高を調査。返済本格化が地銀収益に与える影響を試算し、「実質的」本業利益ワーストランキングを作成した。特集『銀行・信組・信組 最後の審判』(全16回)の#2では、その結果を明らかにする。浮かび上がってくるのは、地銀の3割が“危機”に突入し得るという目を背けられない事実だ。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

ゼロゼロ融資返済本格化の
地銀収益に与える打撃はどの程度か?

「利益の“水増し分”はいくら剥がれ落ちるのか。場合によっては赤字に陥る地方銀行もあるはずだ」(地銀幹部)

 地銀幹部がそう口々に語る、利益の水増し分――。それは、実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)を実行して増えた貸し出し収益のことだ。

 ゼロゼロ融資とは、新型コロナウイルスの感染拡大によって売上高が減少した企業に実質無利子・無担保で資金を貸し出すという、国が打ち出した中小企業支援制度だ(現在、新規実行は終了)。

 しかし実は、中小企業のみならず、地銀側もこの制度に救われていた。ゼロゼロ融資によって地銀は、「安定収益が確保でき、しかも“リスクフリー”の、おいしい貸し出しを行えていた」(別の地銀幹部)からだ。

 というのもゼロゼロ融資は、融資後3年間の利子を企業に代わって都道府県が金融機関に補給する決まりなのだが、その利率が高かった。都道府県によって異なるものの、日興リサーチセンターの試算によれば、ゼロゼロ融資の利回りは地銀平均で1.29%だ(2022年3月末のゼロゼロ融資残高を公表している各都道府県・各市信用保証協会の管轄下に本店を置く79行の平均)。

 今や地銀は「中小企業向けでも0.3%ほどしか金利を取れないことがざらにある」(地銀関係者)。その現状に照らし合わせれば、ゼロゼロ融資は安定的な収益源といえた。

 しかも、だ。ゼロゼロ融資は返済が滞っても元本の80%か100%を公的機関である信用保証協会が肩代わりしてくれる、いわば“リスクフリー”の貸し出しでもあった。

 その、まさにおいしい貸し出しが23年7月以降、一気に剥がれ落ちていく。3年間の利子補給期間が終了することに伴い、融資完済に向けて動きだす企業が多いと見られているのだ。

 では実際のところ、ゼロゼロ融資の返済本格化により、地銀収益はどれだけ打撃を受けるのか。ダイヤモンド編集部では、独自アンケートで地銀のゼロゼロ融資残高を調査。返済本格化が地銀収益に与える影響を試算し、ゼロゼロ融資による利益の水増し分を除いた「実質的」本業利益ワーストランキングを作成した。

 次ページでは、その結果を明らかにする。浮かび上がってきたのは、地銀の3割が“危機”に突入し得るという目を背けられない事実だ。