考古学者で冒険家のインディ・ジョーンズが活躍する映画の最新作「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」が公開中です。インディはさまざまな危険に見舞われますが、実際の考古学者も、墓石に閉じ込められたり、原因不明の病にかかったり、人骨と過ごしたり……発掘調査は命がけだそうです。3人の考古学者が発掘調査中におきた「怖い体験」を赤裸々に綴った前代未聞のノンフィクションエッセイ『考古学者が発掘調査をしていたら、怖い目にあった話』(著:大城道則、芝田幸一郎、角道亮介/ポプラ社)より、一部をご紹介します。
金銀財宝が出てくることは滅多にない
ある夏の発掘シーズンに、ローマ時代に造られた地下墓の土と砂を手ガリ(遺構の検出に使う。木の柄に、二等辺三角形の刃が差し込まれた道具)と手スコ(移植ゴテ)を使って地下墓の壁際の床上を掘っていた。その日、他の隊員たちは近くにある他の地下墓の調査に掛かりっきりで、私の担当している墓には私しかいなかった。発掘は同じ手順を何度も繰り返すので、退屈との戦いでもある。映画のように金銀財宝が出てくることは滅多にない(でもたまにあるから、やめられないのだが……)。
午前中の発掘が終了し、車で宿舎に戻り、砂を落とすためにシャワーを浴びた後、食堂でみんなと一緒に昼食を食べた。その後、夕方までは昼寝の時間だ。二時間ほど仮眠する。体力がすべての海外発掘である。健康第一。寝ないといけない。体を休めるのも発掘調査の重要なポイントだ。病気になったり、怪我をしたりすると調査隊の足を引っ張ってしまうからだ。
夕方、太陽が西へと少し傾き、日差しが弱まった頃を見計らって、続きの作業をするために現場に向かう。墓は地下墓であるため地上から斜めに延びる階段を降りて、入り口である扉部分を通り、中に入る。古代の人々も同じ手順で祖先のお墓参りをしたのであろう。その証拠に墓の床面からは素焼きのランプや水を入れる水盤が発見されている。