楽天 解体寸前#7Photo:kyodonews

巨額赤字をものともせず突き進むトップダウン組織――。楽天グループ総帥、三木谷浩史会長兼社長の暴走を止める幹部はいないのか。特集『楽天 解体寸前』の#7では、三木谷氏を支える側近チームを大解剖する。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

巨額赤字の携帯事業を率いるのは
三木谷氏が迎え入れた外国人幹部

「彼は、モバイルネットワーク界のスティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのような存在だ」

 楽天グループ総帥の三木谷浩史会長兼社長がそう呼んで全幅の信頼を寄せるのが、楽天モバイル共同CEO(最高経営責任者)のタレック・アミン氏だ。三木谷氏は携帯電話事業の本格参入から2年が経過した2022年3月に、自ら務めていた楽天モバイルCEOの座をアミン氏に譲った。楽天グループ副社長でもある外国人技術者は、三木谷氏を支える側近の一人だ。

 三木谷氏が、インドの通信会社リライアンス・ジオ・インフォコムの上級副社長を務めていたアミン氏を携帯事業のけん引役として三顧の礼で迎え入れたのは、18年6月のことだ。以来、アミン氏が主導する携帯ネットワークの構築に費やした設備投資の累計は1兆5000億円を超えた。これにより23年3月末の連結有利子負債(金融事業を除く)は1兆8214億円に達し、今後5年間で楽天グループは1.2兆円の社債償還地獄を迎える。

 それでもアミン氏は決算説明会の場で「われわれの『仮想化ネットワーク』は設備投資コストが安く済む。これが競合と全く違うところで、本当にエキサイティングなことを実現したのだ」と早口の英語でまくし立て続けている。

 危機的な財務状況の中で「世界で誰もなし得ていない技術」を誇示するアミン氏と、同氏を絶賛し続ける三木谷氏。二人の関係は、グループが抱える危うさが凝縮されているようでもある。

 楽天グループの経営チームは典型的なワンマン組織だ。次ページでは、三木谷王国を支える「側近実名リスト」を提示することで、この特異な組織の構造を大解剖する。