楽天 解体寸前#9Photo:JIJI

日本郵政が楽天グループに出資した1500億円が850億円の減損処理に至った。郵政の増田寛也社長は楽天との提携は誤りではなかったことを強調しているが、郵政側が得られた成果はほとんどない。特集『楽天 解体寸前』の最終回では、両社の提携の真相に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

楽天出資で「巨額減損」の郵政
いまだ「失敗」を認めない理由

 日本郵政は6月30日、1500億円の出資で取得した楽天グループの株式を減損処理し、2023年4~6月期に850億円の特別損失を計上すると発表した。

 21年3月末に1株1145円で取得した楽天株は、2年後の6月末時点で499円まで下落。これにより、減損処理が必要となる取得原価の50%(573円)を下回った。

 郵政の増田寛也社長は21年3月12日、楽天の三木谷浩史会長兼社長と共同で開いた資本業務提携の記者会見で「最高のパートナー」とたたえたが、わずか2年余りで楽天株は「巨額減損」に陥ったというわけだ。

 会計ルール上は、24年3月期末までに楽天株が573円を上回れば通期の減損は免れるが、すでに楽天株の巨額損失のリスクに翻弄されている現実を見れば、郵政が楽天に1500億円を出資した判断は「失敗」だったと評価されるべきだろう。

 とはいえ今もなお、増田氏はこの提携を失敗とは認めていないようだ。なぜならば、物流やDX(デジタルトランスフォーメーション)などの分野での協業効果にいまだ期待を寄せているからだ。だが、残念ながらこれまでの進捗を検証する限りにおいて、1500億円を拠出した価値はほとんどなかったと言えるだろう。

 一方の楽天は、郵政との提携で巨額資金を引き出しただけではなく、主力の国内EC(電子商取引)事業の利益率を格段に向上させており、直接的で即効性の高いメリットを享受した。

 結果として、この提携における両社の明暗ははっきりと分かれた。次ページでは、郵政・楽天の提携効果とこれまでの経緯を振り返り、両社の提携の実態に迫る。