ネット証券 ゼロの衝撃#4Photo:123RF

楽天グループ本体の金策のために上場を計画しているのが楽天証券ホールディングス(HD)だ。SBI証券が仕掛ける完全無料化の直撃は避けられず、「苦難の上場」となりそうだ。特集『ネット証券 ゼロの衝撃』(全6回)の#4では、上場の「三木谷帝国」からの脱出という側面と、株主のみずほフィナンシャルグループを含む各者の思惑を読み解く。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

楽天証券HDの楠社長も基地局建設ノルマ
生粋の楽天子会社ではない証券の本音は?

「楽天モバイル」の会員数が伸びず、大赤字となっている楽天グループ。社員や契約社員にさえ携帯電話の契約獲得ノルマを課しているが、その成果が芳しくなく、三木谷浩史会長兼社長が朝会(朝の始業前の会議)でいら立ちをあらわにしたと、2022年12月にダイヤモンド・オンラインで報じた。

 それだけではない。主力のEC事業の幹部には出店者に、金融子会社の幹部には取引先に対し、携帯電話基地局の建設への協力を求めるよう、ここでもノルマが課されていた。

 関係者によると、楽天証券ホールディングス(HD)の楠雄治社長にも、都内のあるエリアが割り振られたという。

 楽天証券HDはもともと、米国の金融機関と旧住友銀行(現三井住友銀行)などの共同出資で1999年にディーエルジェイディレクト・エスエフジー証券として発足し、03年に現在の楽天グループに吸収された。生粋の楽天グループ企業ではない。

 折しも資金難にあえぐ“本丸”の楽天グループは、虎の子の金融子会社である楽天銀行と共に楽天証券HDを上場させ、現金化する考えだが、難航が予想される。

 この2社は上場後も楽天グループの子会社であり続ける予定だが、いわゆる「親子上場」についてはガバナンスを明確化するよう国などが求めている。もっとも楽天証券HDからすれば、上場により、基地局設置のノルマのような理不尽な要求を回避するなど、独立性を高められる可能性がある。

 苦難の上場計画は果たして、楽天証券HDの「三木谷帝国」からの脱出に向けた希望の光となり得るのか。傘下の楽天証券に800億円を出資したみずほフィナンシャルグループ(FG)の思惑も含め、その先行きを占ってみよう。