楽天 解体寸前#3

楽天グループが2023年5月に実施した公募増資で、グループ総帥の三木谷浩史会長兼社長の株式保有比率が3分の1を割り込んだ。携帯電話事業につぎ込む巨額の資金調達を繰り返し、株主総会の重要事項を決める特別決議の拒否権を失ったのだ。日本郵政に続く巨大なスポンサーは現れず、経営は不安定化する恐れもある。その裏で、三木谷氏の資金繰りを支える“影のスポンサー”存在が明らかになった。特集『楽天 解体寸前』の#3では、楽天の経営に大きな影響を与える “影のスポンサー”の正体に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

窮地の三木谷氏を救済する
巨大スポンサーは現れず

「戦略的業務提携や外部資本の活用も検討したい」

 2022年12月期決算を発表した2月14日の説明会。この時点で楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、他社からの資本受け入れの意向を表明し、楽天に巨大な資本を注入するスポンサーの獲得に意欲を示した。

 だが三木谷氏の思惑通りにはいかなかったようで、結局、公募増資に依存した資金調達に終わった。

 巨額赤字と資金繰りに追われる楽天は、厳しい財務状況の中で、4月に子会社楽天銀行を上場させ、5月に提携する西友ホールディングスの株式を売却。楽天証券ホールディングスの株式上場の準備を進めるなど「資本性資金の調達」に力を入れてきた。

 その最終手段となる資本増強に向けては、冒頭の三木谷氏の発言にあるように他社からの資本注入を想定していたはずだ。だが、結果的に楽天が選んだのは、名も知れぬ不特定多数の株主を対象にした公募増資だった。つまり、三木谷氏が追い求めていた巨大スポンサーになる救世主は現れなかったのだ。

 一方、発行済み株式総数が増加したことで、筆頭株主である三木谷氏の保有株の比率が一挙に下落し、創業以来初めて全株式の3分の1を割り込むことになった。三木谷氏は株主総会での重要事項を決める特別決議において、単独での拒否権を失ったことになる。

 また、楽天の経営が不安定化する恐れが出る中で、三木谷氏をひそかに支え続けてきた「影のスポンサー」の正体があらわになってきた。それは大株主である日本郵政をも超える存在として楽天の経営に影響を及ぼす可能性がある。

 次ページでその正体を明かしていこう。