廃棄処分にしたら、それは全額費用になります。つまり、@100円×80個=8000円が費用になります。そうなると、200円の利益が出ていたように見えたこのビジネスは、実は200円−8000円=△7800円、すなわち、かなりの赤字だったということが、ここでやっとわかるのです。
現実的には、この廃棄損失を数年前の売上総利益200円と結びつけて考える人はなかなかいません。複数商品を大量に扱っている場合はなおさらです。そうなると、実はこのビジネスは失敗だったということは誰も認識しないことになります。これが在庫の怖さです。
当然のことながら、儲かったかどうかは、最後はキャッシュの問題です。
ところが、在庫になった分はそれに使ったキャッシュがすぐに費用化されないので、実際に使ったキャッシュが見えないのです。最悪、上記の例のように、損したことも認識できないことになります。
ビジネス誌などには、ときどき「過剰在庫は利益を悪化させる」というようなことが書かれていますが、あれは間違いです。
確かに、外部倉庫を借りていれば保管費などの費用がかさみますが、それは本質的なことではありません。本質的には、過剰在庫はキャッシュ・フローを悪化させるのです。費用は、在庫となっている資産の流出か消費が行われない限り、発生しません。
一方、過少在庫は、機会損失という問題につながります。その商品の在庫があれば売って利益を得られたはずなのに、在庫がなかったために取り損ねた利益です。多すぎても少なすぎてもいけない――ここに在庫管理の難しさがあります。