キャッシュフロー・マネジメント術#2Photo:erhui1979/gettyimages

「作れば作るほど儲かる?」実は製造業にありがちな会計上の罠がある。課長以上の管理職なら理解していないと窮地に陥るかもしれない。今回もダイヤモンド・オンラインでの連載や会計の著書を多数執筆する矢部謙介・中京大学教授が易しく解説。特集『課長は理解必須!キャッシュフロー・マネジメント術』(全6回)の#2では、見掛けの利益にだまされないキャッシュ管理術をお伝えする。

見掛け上の利益で喜ぶと
恐怖の結末が待っている

 特集第1回目『「利益の出し方」が一発でわかる図があった!管理職なら理解必須の固定費&変動費』では、会社の利益構造を把握するために必要な、変動費、固定費、そして損益分岐点の考え方について説明しました。今回は、それらの知識を使いながら、在庫と利益、そして在庫とキャッシュ・フローの大事な関係性についてお伝えしていきます。

 実は、この関係性をきちんと理解していないと、見掛け上の利益にだまされてとんでもない目に遭ってしまう可能性があります。特に製造業で管理職をされている方、目指している方は要注意のポイントです。

 下図は、ある工場で製品を50万個製造した場合と、100万個製造した場合の原価(費用)と売上高、利益について例示したものです。

 パターンAでは、製造した50万個の製品は全て売れたものとします。一方、パターンBでは100万個製造した製品のうち、販売されたのは50万個であるとしましょう。製造コストについては、製造個数に関係なくかかるコストである固定費(工場で働く従業員の労務費など)が250万円、製造個数に比例してかかる変動費(材料費など)は製品1個当たり40円であると仮定します。

 パターンAでは、固定費と変動費を足したものを製造個数で割った製品1個当たり原価は90円、パターンBでは65円と、パターンBの方が低くなっています。これは、製造個数が多いほど、製品1個当たりの固定費が低くなるためです。

 結果として、製品1個が100円で売れたとすると、パターンAにおける売上総利益は500万円、パターンBでは1750万円となります。1個当たりにかかる固定費が小さくなる分、製造個数を増やした方が、利益が大きくなるのです。

 なぜなら、会計では、製品が販売された際に費用を計上するルールになっているからです。

 そして、ここが要注意なのです。利益が大きければいいと、決して喜ぶことはできません。