欠点の1つは、費用を見ても使ったキャッシュの額がわからないことです。

 普通のビジネスパーソンは貸借対照表には無頓着です。ほとんどの人は売上高と費用という損益計算書の情報にしか関心がありません。

「利益を出せ!」と年中言われているわけですから、無理もないでしょう。そして、費用が少なく利益が出ていれば、「良かった、良かった」と安心するわけです。

 その前提としてあるのは、「費用がかかっていないということは、お金を使っていないということだろう」「利益が出ているということは、お金を儲けられたということだろう」という感覚です。

 しかし、売上原価の額は「それだけのお金を使った」という意味ではありません。あくまでも、販売された商品の原価です。

 先ほどの例で言えば、「売上原価8000円」という情報を見ても、「使ったお金は10000円」ということはわからないのです。

 それでも、この例はまだ良いほうです。使ったお金の8割が費用になっていますから、思い違いの程度は小さいからです。

 もし、100円の商品を100個仕入れたうち、売れたのは20個で、売れ残ったのが80個だったらどうでしょう。このとき、費用になるのは100円×20個の2000円だけです。使ったキャッシュは10000円であるにもかかわらずです。

過剰在庫はなぜ悪なのか?

 そもそも利益は、販売単価が仕入単価を上回ってさえいれば出ます。たとえば、先の例で販売単価が110円であれば、売上総利益は次の通りです。

【@110円×20個−@100円×20個=200円……売上総利益】

 これは要するに、販売単価と仕入単価の差額10円の20個分です。

 これで利益は出ますが、もし売れ残った商品がその後も売れずに、数年経ってから廃棄処分になったらどうなるでしょう。