消費の4割支える年金受給世代、所得環境改善が「賃金・物価の好循環」実現の鍵Photo:PIXTA

高い賃上げは来年も続く見込みだが
価格転嫁できるかがポイントに

 今年の春闘賃上げ率は、定昇を除いたベースアップ分で2%を超え、1993年以来30年ぶりの伸びを記録している。

 多くの企業が物価高騰に対する労働者の生活補助や深刻化する人手不足への対応に力を入れたことが背景にある。

 人手不足を考えると、来年の春闘でも今年以上に賃金が引き上げられる可能性があるが、持続的な賃金上昇には、企業がこれまで原材料高を価格転嫁してきたように、今後も需要の増加や賃上げによる人件費の増分を適切に価格転嫁できるかどうかがポイントだ。

 価格転嫁ができれば、企業はこれを原資にさらなる賃上げが可能となり、賃金と物価の好循環サイクルが生まれる。

 そのためには家計の値上げ耐性が高まることが重要だ。

 物価の伸びを上回る所得が得られるよう所得環境が改善すれば、家計は値上げを受け入れやすくなり、企業は価格転嫁しやすくなる。

 逆に改善しなければ、値上げが難しくなり、ひいては賃上げも手控えられることになる。

 とりわけ重要なのは、消費の4割を支える年金受給者の所得環境の改善だ。