30年ぶり高賃上げでも「実質賃金マイナス」を抜け出す術はあるかPhoto:PIXTA

30年ぶりの高い賃上げ実現は
価格転嫁の「インフレ効果」

 2023年の春闘は30年ぶりの高い賃上げ率だといわれ、93年以来の高い伸び率だ。

「なぜ、今まで実現できなかった賃上げが、今年(23年)になってできたのか?」という素朴な疑問を持つ人もいるが、その答えをあえて簡略化して言えば、「インフレ効果」が大きかったということだ。

 インフレ効果とは、物価上昇によって、売り上げや売上原価・粗利が同時に増えていくことを指す。原材料費が上昇すると、まず売上原価は増えて、そのコストを企業が価格転嫁することで売り上げが増える。

 一定ペース以上で価格転嫁が進めば、粗利(=売り上げ-売上原価)も増えていく。そして賃金に回される部分も増えるということだ。

 だが一方で物価変動を除いた実質賃金は直近の毎月勤労調査でも4月まで13カ月連続でマイナスが続き、22年度も前年度から1.8%減った。

 経済の長期停滞を脱するには持続的な賃金上昇がぜひものだが、春闘の“好調”と実質賃金低迷のギャップはなぜ起きるのか、「実質賃金マイナス」を抜け出すすべはあるか。