松本は吐き捨てるように言った

「大﨑さん。会社の上司とかって、ほんまにしょーもない。最低やな!」

 松本くんと僕が会ったのは、大阪のホテルニューオータニ。僕が座るなり、松本くんは吐き捨てるように、

「最低や」

 と、もう一度呟きました。聞けば、吉本の幹部の一人に呼び出され、「東京に本格進出なら、そろそろマネージャーを代えたほうがいい」と言われたと言うんです。

 怒りに震える松本くんの姿を見ていると、同じくらいに燃えていた僕の怒りは、不思議なことにすーっと落ち着いていきました。

 ダウンタウンと僕がゼロから築き上げたものが、気に食わないという男の嫉妬。松本くんと浜田くんの東京進出は、「この二人はいずれ世界進出できる」と考えていた僕にとっても、夢の第一歩でした。

 絶好のタイミングがやっと来たのに、せこい男のジェラシーによって引き離されるのはもちろん悔しいけれど、

「松本がここまで怒ってくれるなら、それでええやん」

 と思えてきました。うれしかったし、「こいつとは、根元のところでつながっている」と確信できました。

 芸人とマネージャーは、友だちではありません。どんな関係かはうまく言えないけれど、つよいつながりなのだと信じられる、松本くんのうれしい怒りでした。