「最強・中国」に勝つのはどこ?世界数学オリンピックが20年ぶりに日本開催、600人の天才中高生たちが超難問に挑む藤田岳彦(ふじた・たかひこ)/数学オリンピック財団理事長。「来日を楽しみにされている参加国も多いので、しっかりサポートしたい」(撮影/神田憲行)

「7月は大学受験で大切な時期なんですが、それも数学オリンピックが終わってから準備しても間に合うと思います。心配はしていません」

 目標はずばり、

「満点で世界1位になり、金メダルをとること」

 大きく出たように見えるが、根拠はある。実は小出さんのひとつ上の先輩が、昨年の大会で満点を取って世界1位になっているのだ。しかも小出さんは予選選考を兼ねた国内の数学オリンピックで1位の金賞を受賞している。自信のほどを尋ねると、笑みを浮かべた。

「解けるかどうかはその日の精神状態も関わってくると感じています。代表決定のときみたいに、また前の晩に寝られないんじゃないか心配ですけど」

 最後に国際数学オリンピック出場者の進路はどうなるのだろうか。冒頭の藤田さんによると、

「世界の代表選手の中にはやはり数学者の道に進む者も多く、なかには『数学界のノーベル賞』と呼ばれるフィールズ賞の受賞者もいます」

 また日本代表でも、

「AI技術に数学理論が必要なので、そちらのビジネス方面に進む人も出てきました。『数学をやっても儲からない』は過去の話です」

 社会の中の数学へのニーズが膨らむにつれて、活躍の場も広がっている。将来、世界に貢献するような技術を発明した人物がこの大会に出て刺激を受けていたとしたら、私たちにとっても愉快ではないか。(ライター・神田憲行)

AERA 2023年7月3日号

AERA dot.より転載