「最強・中国」に勝つのはどこ?世界数学オリンピックが20年ぶりに日本開催、600人の天才中高生たちが超難問に挑む2019年イギリス大会開幕式での日本代表団。開幕式では参加国が1カ国ずつ壇上に上げられて紹介される。晴れがましいシーンだ(写真:数学オリンピック財団提供)

「自分は初参加だからメダルとかテストの点ばかり気にしていたのに、自分より優秀な成績を取った人がそんな研究までしていたなんて、衝撃的でした。数学オリンピックの問題は美しい、そしてやはり研究の数学も美しいと思いました」

 そこで出会った「数学仲間」とは、今も会って数学の議論を交わすという。

「数学研究とは基本的に孤独な側面があります。それが優秀で刺激的な仲間と出会って、孤独から解放され、刺激し合う関係を築ける。スポーツのそれと同様に、数学オリンピックも参加することに意義あり、ですよ」

 それでは、今大会に出場する選手はどう思っているのだろう。

 小出慶介さん(17)は神戸市にある灘高校の3年生。同校の名物クラブ「数学研究部」の部長でもある。

お手軽に楽しめるよう

 毎年代表入りを目指して挑戦していたが、過去2回は最終選考合宿まで残ったものの、涙をのんできた。満を持しての初出場である。

「代表選考のテスト前の晩、緊張で寝られませんでした」

 と笑う。「代表決定」の連絡をもらったときは、やはりホッとしたという。

 数学オリンピックの代表入りは小学5年生のころからの目標だった。

「父親がジュニア数学オリンピック(中学生以下が参加する数学オリンピック)の問題を見せてくれて、それが解けたんです。それで挑戦してみようと思いました」

 大会に向けた準備は、刊行されている数学オリンピック向けの参考書を読んだり、問題集を解いたり。

「数学オリンピックの問題の魅力は、複雑すぎない解法があることです。大学で学ぶ数学は難解だったり未解決だったりするんですが、オリンピック問題はお手軽に楽しめるように調整されているので、解いてて楽しいんです。また、『競う』という点も楽しみです。努力して報われたり、報われなかったり……その点はスポーツのオリンピックと同じかもしれませんね」

社会のニーズも膨らむ

 そんな気軽に「楽しめる」程度の問題ではないと思えるのだが……ちなみに小出さんは全国模試の数学で偏差値90を取ったことがある。