健康診断結果を見てショックを受ける男女のイメージ写真写真はイメージです Photo:PIXTA

経済産業省が推進する「健康経営」が企業の間で大きな注目を集めている。「健康経営優良法人」に認定されないと採用活動で不利になる、といった事情もあるようだ。しかし、この健康経営、企業が従業員の健康に目配せするというコンセプトは賛成できるものの、中身は問題だらけだと筆者は考えている。経産省は制度を改めるべきではないだろうか。(イトモス研究所所長 小倉健一)

「健康経営」が一大ブームだが
経産省は中身を改めるべきではないか

 経済産業省が推進する「健康経営」が企業の間で、一大ブームを起こしているようだ。特に大企業の採用担当者からは「健康経営優良法人に認定されていないと、就職を希望する学生が少なくなる」という声が聞こえる。

 確かに、「健康経営」という言葉の響きは美しいものだ。企業が従業員の健康にまで責任を持つというのも方向性としては賛成できるが、中身を見ていくと「プレゼンテーションは得意だが内容がボロボロ」という経産省のいつもの悪いクセがたくさん出ている代物になってしまっている。企業関係者は、採用などへのメリットがあることから「健康経営」認定を目指すのだから、経産省は中身をきちんと改めていくべきではないだろうか。

 もっとも大きな部分でいうと、「健康経営の推進について」(経産省ヘルスケア産業課、2022年6月)の資料の冒頭の方で示されている「目指すべき姿~予防・健康管理への重点化~」という点だろう。該当ページには、縦軸に公的医療費・介護費、横軸に年齢を取った数字の入っていない「怪しげなグラフ」が用いられていて、健康経営を導入すると、あたかも医療費・介護費が減るかのような書きぶりだ。

 健康経営優良法人の認定要件にも「従業員の健康診断の実施(受診率100%)」とある。16項目のうち13項目以上をクリアしなければいけない中の1項目だ。

 この「健康診断」においては三つの問題がある。