教員一人一人が
主体性をもてる環境をつくる

 取り組みそのものは、“そんな程度?”などと思われるかもしれません。しかし、私はいずれもすばらしい取り組みだと考えています。なぜならば、いずれも前例のない取り組みであり、だれかから促されて行ったことではなく、教員自身が「やりたい」と手を挙げて実現したことだからです。

 こうしたチャレンジは、校長のトップダウンでは生まれません。そうかといって、教員任せのボトムアップでもむずかしいでしょう。先生方一人一人の目線が同じベクトルを向き、校長の掲げた経営ビジョンを実現するために、「自分のしたいことはなにか」を主体的に考えられてこそ可能になる取り組みだからです。

 ある教員の「やってみたい」が、やがて教員みんなの「やってみたい」になる。これが私の考える学校経営改革の理想型です。そのようにして生まれた(私の発想を超える)アイディアや取り組みはほかにもたくさんあります。

 先生方や子どものやりたいことを引き出し、認めながら、現実化するのに必要な環境をつくる。これが校長の行うべき最大のミッションです。そのためのリーダーシップです。そうとらえれば、校長がリーダーシップを発揮した姿の最終形は、「個々の教員や子どもが生き生きしている姿」にほかなりません。

 そんなふうにしているうちに、教員同士の人間関係が円滑になり、学校組織も風通しがよくなっていきました。学校にかかわる人たちが、共に家族であるかのように思える学校になっていったのです。